UNDULATION : Electric Guitar
UNDULATION立ち上げの直後よりお声掛けを戴きました『島村楽器 : ミーナ町田店』様よりのご依頼品。名機 : ポール・リード・スミスにUNDULATIONの施工。本機をお預かりしてから10日間程の間は、常に作業場の傍らに置き、このエレクトリック・ギターが有する独特のキャラクターやイメージ、そして何よりも繊細なデザインによりますボディーシェイプの詳細を自らの中で消化をする事に努めました。
純真無垢の、しかも非常に上質な楽器にUNDULATIONを施す事には、正直ためらいの心持ちを隠す事は出来ません。UNDULATIONの施工後、その楽器が奏でる音色には懸念される程のネガティブな影響は及ぼさない事は経験上、重々承知を致しておりますが、それでも、やはり今回の施工対象はポール・リード・スミス。。。
この個体の最大の特徴として、初めから私の目を惹きました事は、ネックの裏側が真っ黒な仕上げである事。ギター全体は実にエレガントなデザインであるにも関わらず、その肝心要のネックの裏側の処理がオールブラックであった事にはかなり驚きまして、一般的なエレクトリック・ギターとは異なる仕様にギターメーカーとしてのポール・リード・スミスの心意気と申しましょうか、何よりも私的にはそこに彼等のRock’n Roll スピリットを大いに感じた次第です。
その事に気付きますと、全体的なUNDULATIONラインの流れ方や色の選別等々の目指すべきベクトルの方向は自ずと決まって来る訳でありまして… 神々しくも荒々しい。ポール・リード・スミスが有するロックギターとしての本質を存分に表現する為の施工を目指した次第です。
ボディー全体に見られる黄色の波線ですが、実はこの色は黄色では無くナノシリカ / アクリル樹脂による無機有機ハイブリッド特殊塗料によるゴールドのカラーリングとなります。このゴールドの特殊塗料は製造過程の困難さ故、今では廃盤となってしまったカラーでありまして、私の手元にも残りあと1L弱となる貴重な塗料でありますが、今回はこちらの特殊塗料を大胆に使用させて戴きました。そしてそのゴールドの上には神社の鳥居や支柱に塗られている朱の色に近い赤系の特殊塗料を配しUNDULATIONの仕上げと致しました。
結果、そこに現れたUNDULATIONは、例えるならば 、高天原を追放されるが八岐大蛇を退治し、遂には正義の神となった ” 須佐之男命 (スサノオノミコト) ” のイメージ。ポール・リード・スミス独特の粒の揃ったクリアーなサウンドに、更に中音域のボリュームが増した印象のサウンドとなりまして、またナチュラルなディストーション・サウンドを奏でる際には、きっと荒ぶる神 : 須佐之男命がその音の中に宿っておられる事でしょう。